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ふらっと学校を抜け公園へ行ったら群れてるサボリ集団がいたので咬み殺した。
あまりに弱くて飽きたので、学校へ戻ろうとした。
特別なことなんて何もない、ただ気まぐれに従い行動していた。
……はずだったけど。



ちょうど公園を出ようとしたとき、小さな男の子が歩道を走ってきた。そして。
びたんっ。
派手に倒れた音。何にもない道路に躓き、男の子は手で支えるまもなく転んでいた。しかもランドセルが開き、飛び出た教科書やらが道路に広がっている。ありえないほど見事に転んだものだ。
コロコロ、と鉛筆がこちらに転がってきた。筆箱の中身までばら撒くとはむしろ器用すぎる。おもしろい草食動物。いや、追われる側の草食動物は転んでなどいられないだろうに。
呆れ半分感心半分で鉛筆を拾った。もう少し見物してみよう。

少年はしばらくすると起き上がり、泣きそうに肩を震わせながら教科書を拾っていった。そして開いた筆箱を拾い上げ。
こちらに気がついた。

返さねばならないのでとりあえず手にしている鉛筆を少年に向かって放り投げる。
……少年はぼけっと突っ立ったまま、額でそれを受けた。
今のくらい取れるだろう。せめて避けるとか。それなりに痛いんじゃ。
しかし少年は気づいていないのか、何故かそのままこちらに駆け寄ってきた。
足元から、じーっと見上げてくる。澄んで、きれいな瞳だと一瞬思った。が。

「お兄ちゃん、仮面ライダーぁ!?」

一声叫ぶと、その少年はにっこり笑って学ランを引っ張り始めた。
「マント、かっこいいー!!!」
きゃっきゃと無邪気に笑う少年に、引き剥がそうとするのを刹那躊躇う。
「……」
この、身長差のせいだろうか。
ひょいっと少年を目線の高さまで持ち上げた。
「ッ高い!」
ますますはしゃぎだしてしまった。恐れの欠片もない、無垢な笑顔。
反応に困ってそのまま固まっていたら。
不意に、少年がバランスを崩して落ちそうになった。
慌てて抱え直したが、しかしいったいどうしたらこんなにしっかり支えているところから落ちられるんだ。身体能力に異常があるとしか思えない。
と。
「ありがとうっ」
えへっと笑うと手を伸ばして、少年が首に抱きついてきた。
柔らかい髪ともちもちとした滑らかな頬が、顔にあたる。その、あたたかさ。
純真で明るい生命の灯りを、感じた。小さくて柔らかく清らかな、生命。
ふと、腕にかかるおもさ、ぬくもり、首に回された細い腕、幼い顔、全てがいとおしく思えた。
自ら僕に駆け寄ってきた愛らしく無邪気な変わったちっぽけな生き物。

「……食べちゃおっか」
ぽつりと零した独り言はきっと届いていないけど。まっさらな子供は邪気に敏感なのだろうか、急に腕を外し黙りこくった。じっとこちらを見つめている。そろそろ下りたいのだろうか。
束の間どうしようと考えてから、ふっ、と口の端を上げ微かに笑い。
頬に、軽く口付けて、そっと下ろした。

「じゃあね」
軽く手を振ろうとしたら、袖をつかまれた。じっと、澄んだ瞳をこちらに向けて。
「……」
小学生のくせに誘ってくるなんて、いい度胸。どうなっても知らないよ。


――その高校生は、袖を握る小学生の額を軽くついてから、屈んだまま、少年の唇に、口付けた。



オマケ

ぽぉっと立ち尽くしている少年。
どうも動きそうにないので放られていたランドセルを取ってきて、背負わせた。
どすっとその重さを少年に預けた途端、一瞬よろめいてはっと気をとり戻す。
「じゃあ今度こそちゃんと帰りなよ?」
手をとって出口まで送り見送る。歩き出してもずっと後ろを見ているので、少し手を振ったらパッと笑みを咲かせ大きく振りかえしてきた。そして。
「じゃあね、マントのお兄さん!」
とても弾んだ声。その憧憬を孕んだ幼い声にうっと一瞬詰まった……
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