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ダン、と重い音、傾ぐ男、紅い液体を滴らせ、倒れる鈍い音。
血染みが広がり、ピクリとも動かない体。

ゆるゆると首を巡らす。少し離れて、黒い長身の影。薄暗い中では顔など見えない。
けれど
銃口を下げ彼は何事もなかったかのように服を叩く、歩み寄り、立ち尽くす俺の頬に触れて

その手が一瞬震えた。



……嗚呼、でも違う。俺を抱きしめる腕、首筋にかかった溜め息が孕むのはただ俺が無事だったという安堵感、呟かれるのはごめん、何を謝るのヒバリさん。
最早彼の視界に屍はなく、俺を守るのに人一人の命が消えようと気にもしない、きっと。

血塗られた業を、断つと言ったのに。この人は俺のために人を殺した。
この自由な人を、俺がこの世界に引き込んでしまったのだ。束縛を嫌う彼が、俺には繋がれて。
けれど
人を殺して欲しくなんて無い、我が儘だろうと。
気まぐれに羽ばたく鳥、血塗れた翼は戻らない。世界を覆う大空、けれど彼のしなやかな翼ならばその程度飛び出していけるのに。俺が此処にいる限り、彼も留まるのだろう。



腕を彼の腰に回す。ぎゅ、と抱きしめ返して。
仲間や組織の人や、リボーンを裏切って、俺が此処を離れることは出来ないけれど。
「謝ることなんて何もありません」
自分くらい自分で守れるようになるから。
「俺とヒバリさんの、共同戦線ですよね」
誰も傷つけなく傷つかなくなるように頑張るから。
「一人で、全てを頑張らないでください」

彼の手だけが、汚れていくのは見たく、ない

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ツナは雲雀さんに黙ってイタリアに行ってしまいました、なお話。
数年後設定ですが、分からないな……


強い日差しが部屋を明るく照らし、窓からは乾いた風が潮の香りをのせて流れ込む。まだ慣れない異国の、初めての夏。
じめじめしないから割と楽だと思ったけれど、やっぱり暑いものは暑い。クーラーは流石にもったいないので(何故か)バジル君から差し入れられた扇子で仰ぎつつ、ぺらぺらとイタリア語入門と書かれた本を捲っていく。まずは言葉が通じなければ話にならないから、目は必死に文字を追っていく。
はず。

けれど。読んでるはずの内容は、さっぱり頭に入ってこなかった。




一瞬、強い風が駆け抜けた。
さして力を入れてはいなかったから、風はあっという間にページを捲りきってしまった。あーあ、と溜め息をつきながら、また開くのも億劫で椅子に座ったまま伸びをする。
と、視界に黒いものが映った気がした。とくん、と心臓が高鳴る。
頭の隅で全否定しながら、けれど体は心に逆らえずゆっくり、視線を部屋の片側へと移す。

二階なのに。窓枠に乗っかる、黒い人影。焦がれ続けた、懐かしい綺麗な顔。

窓に、目が釘付けになる。そんな、まさか。とうとう幻覚まで。
頬をつねる。目を擦る。また頬をつねる。まだ、消えない。

「久々に会ったと思ったら、何変顔作ってるの」

何度聞いても、綺麗だな、と思う、大好きな声。呆れたような。

「ヒ、バリさん……?」

ほん、もの、なのかな。もっと、はっきり見たいのに。視界はどんどんぼやけ歪んでいく。
不意に、首に腕が回される感触。ぎゅっ、と抱きしめられて。
間近から、震えるような吐息を感じた。

「なん、で」
聞こえたのはいつもの彼に似つかわしくない弱々しい声。抱きしめる手まで震えてるような気がした。
「なんで、僕の前から勝手に消えたの」
ゆっくり、解かれる腕。彼の真っ黒な目が真っ直ぐ自分に向いて。
「もう、僕は嫌い?」
離れてゆくぬくもりに、とっさに縋りついた。

「違う!」

自分でも驚く程鋭い声だった。春に、振り切ったのではなかったか。でも、押さえるのはもう不可能だった。
涙を拭い、やっと鮮明に見られた彼の目をしっかり見つめる。
「何も言わなくて、ごめんなさい」
頭の隅で必死に制止する声がする。けれど、溢れ出す言葉には追いつかない。
「でも俺、ヒバリさんが好きです。それは絶対変わらない。会えなくて、死ぬ程寂しかった。でも、巻き込むわけにはいかないから……っ」


唐突に視界が真っ黒になった。掴んでいた腕に、いつの間にか優しく抱かれていた。

「よかった」

頭から伝わるあたたかい、優しい、ほっとしたような声に、柔らかく包まれる。
彼がそのまま床に膝をつくと、秀麗な顔が至近距離で綺麗に笑みを浮かべたのが見えた。

「前言撤回不可だからね。もう、逃がさないよ?」

唇から零れる温かい吐息が顔をくすぐる。捕食者の鋭い眼差しに射抜かれ一瞬固まると、唇に柔らかい感触。会えなかった時を埋めるように、何度も何度も口付けられる。
不意に、体が浮く感覚。目を開ければ、いわゆるお姫様抱っこ。慌てて下りようとしたけど、目が合った彼は本当に綺麗な、幸せそうな顔をしていて。心の中でこっそり、いつまで経っても埋まらない身長差に愚痴を零すだけにした。

「今度こそ、結婚しよう。もう、待ってあげないから。一緒にいたい」

抱かれたままさらに引き寄せられ囁かれた言葉。俺はふふ、と笑って返す。

「もう7月ですよ?ジューンブライド逃しちゃいましたね」
「神様に守ってもらう必要なんてないよ。僕が幸せにするから」

さらりと真面目に返されてしまった。頬が心なしか熱くなる。
抱っこのまま歩きだすと、そっと、ベッドの上に下ろされた。




「良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、綱吉を想い、綱吉のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓う」

さっき、神様の祝福なんていらないと言ってたのに。すらすらと唱えて、彼はそっと、優しい誓約のキスをした……


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