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ドアを開ければクーラーに冷やされた空気が暑い廊下へ流れ込み、入り口に突っ立つ俺の身体をひんやり包む。しかしそれに心地よさを感じる間もなく顔から血の気が引いた。目が受容した情報を脳は瞬時に解釈し終えてしまった。抗う意思に関わりなく現実を突きつけられる。
そして、体内で一気に怒りが爆発するのを感じた。
何か、叫んで、気がつけば華奢とは言い難いはずの恋人をソファーに押し倒していた。抵抗もなく顔は無感情に整っているが目を逸らしこちらを見ようともしない。
じわりと、涙が溢れそうになった。
「ヒバリさんには、俺の気持ちなんて分からないんですかっ!?こんなに、好きなのに、信じてたのに」
僅かに眉間にしわが寄ったように見えた。何か言い訳がましく口を開く。堪らなくなって、開きかけた唇に自分の唇を重ねた。口づけは甘くて、余計に堪らなくて首に抱きついた。
「ひどい……」
耳元で呟けば彼は首を捻って顔をさらに背ける。
「――」
小声でぼそっと呟く声。しかしこれだけ近ければ聞き逃すはずもない。
瞬間、再び怒りが吹き上がった。
起き上がり手近にあった机をダンと叩けば、ピクッと肩が跳ねた気がした。そっぽを向く彼をひたと睨み据える。いつもじゃ絶対にできない。
しかし手が痛い。落ち着け、俺。
僅かに視線を黒い後頭部から逸らして、ゆっくり言った。
逸らした先には空の器。いや、底の方には申し訳程度に果汁のみが残っている。
「俺の桃まで、全部食べましたね……?」
確認。するまでもないだろう。二人きりの部屋クーラーがきいてて窓すら開いてない中確かに置いてあった桃が忽然と消えたら相手の胃の中に隠れたに決まっている。上手く剥けて上機嫌で手を洗いにいった俺が馬鹿だった。
と、彼がごろりと寝転がったまま体を捻りこちらを向く。恨みがまし気に視線を向ければ、それでも映るのは澄んだ黒目。
口が開かれる。
「僕の前に置かれたんだから僕のものだ」
幾分小声だがさっきより透る声で、いつもの自信たっぷりな口調。何でこの人はいつもこうなんだ。
大きく息を吸って腹に思いきり力を込めた。
「まだ夏で桃は高いんですよっ!?一緒に食べようと思って買ってきたのにっ……!?」
唐突に口付けられた。いつの間に起き上がったのか。
やっぱり、甘くて、甘くて、泣きそうになったら、優しく頭を撫でられた。
「ッ、そんなことじゃ許しませんよ!」
精一杯睨んでやるが頬が熱い。まるで効いてないんだろう。
と、頭の上に小さな重みが乗った。首を傾げ手に取れば。
丸くて柔らかい、
桃。
「ヒバリ、さん……?」
見れば微かに口端を上げて微笑む綺麗な顔。思わず見蕩れて、その間に彼は立ち上がると棚に歩み寄りフルーツナイフを持ってきていた。
「剥いてよ。一緒に食べよう」
見るからに美味しそうな桃。
怒りなんて、吹き飛んでしまった俺は馬鹿なのか。
オマケ
ナイフを桃にあてる。流石というか、安物ではないのだろう。柔らかい果実は先ほどと違い切るたびつぶれる。
泣きそうになりながら、なんとか一切れ切って。そしたら、
手を掬われた。
指先に乗った桃をぺろりと食べて、呆然とただ見ていれば指についた果汁まで舐め取られた。
「美味しいね」
微笑みが何だか不吉で、慌てて桃を切ろうと視線を戻せば取り上げられた。
「美味しかったから、お礼がしたいな」
いつの間にやらさっきとは逆の体勢。
「いただきます」
ご馳走様だろう、とはしかし突っ込む余裕はなかった。
唇が、重なって、
口付けはやっぱり、甘かった。
クロネ様へ
そして、体内で一気に怒りが爆発するのを感じた。
何か、叫んで、気がつけば華奢とは言い難いはずの恋人をソファーに押し倒していた。抵抗もなく顔は無感情に整っているが目を逸らしこちらを見ようともしない。
じわりと、涙が溢れそうになった。
「ヒバリさんには、俺の気持ちなんて分からないんですかっ!?こんなに、好きなのに、信じてたのに」
僅かに眉間にしわが寄ったように見えた。何か言い訳がましく口を開く。堪らなくなって、開きかけた唇に自分の唇を重ねた。口づけは甘くて、余計に堪らなくて首に抱きついた。
「ひどい……」
耳元で呟けば彼は首を捻って顔をさらに背ける。
「――」
小声でぼそっと呟く声。しかしこれだけ近ければ聞き逃すはずもない。
瞬間、再び怒りが吹き上がった。
起き上がり手近にあった机をダンと叩けば、ピクッと肩が跳ねた気がした。そっぽを向く彼をひたと睨み据える。いつもじゃ絶対にできない。
しかし手が痛い。落ち着け、俺。
僅かに視線を黒い後頭部から逸らして、ゆっくり言った。
逸らした先には空の器。いや、底の方には申し訳程度に果汁のみが残っている。
「俺の桃まで、全部食べましたね……?」
確認。するまでもないだろう。二人きりの部屋クーラーがきいてて窓すら開いてない中確かに置いてあった桃が忽然と消えたら相手の胃の中に隠れたに決まっている。上手く剥けて上機嫌で手を洗いにいった俺が馬鹿だった。
と、彼がごろりと寝転がったまま体を捻りこちらを向く。恨みがまし気に視線を向ければ、それでも映るのは澄んだ黒目。
口が開かれる。
「僕の前に置かれたんだから僕のものだ」
幾分小声だがさっきより透る声で、いつもの自信たっぷりな口調。何でこの人はいつもこうなんだ。
大きく息を吸って腹に思いきり力を込めた。
「まだ夏で桃は高いんですよっ!?一緒に食べようと思って買ってきたのにっ……!?」
唐突に口付けられた。いつの間に起き上がったのか。
やっぱり、甘くて、甘くて、泣きそうになったら、優しく頭を撫でられた。
「ッ、そんなことじゃ許しませんよ!」
精一杯睨んでやるが頬が熱い。まるで効いてないんだろう。
と、頭の上に小さな重みが乗った。首を傾げ手に取れば。
丸くて柔らかい、
桃。
「ヒバリ、さん……?」
見れば微かに口端を上げて微笑む綺麗な顔。思わず見蕩れて、その間に彼は立ち上がると棚に歩み寄りフルーツナイフを持ってきていた。
「剥いてよ。一緒に食べよう」
見るからに美味しそうな桃。
怒りなんて、吹き飛んでしまった俺は馬鹿なのか。
オマケ
ナイフを桃にあてる。流石というか、安物ではないのだろう。柔らかい果実は先ほどと違い切るたびつぶれる。
泣きそうになりながら、なんとか一切れ切って。そしたら、
手を掬われた。
指先に乗った桃をぺろりと食べて、呆然とただ見ていれば指についた果汁まで舐め取られた。
「美味しいね」
微笑みが何だか不吉で、慌てて桃を切ろうと視線を戻せば取り上げられた。
「美味しかったから、お礼がしたいな」
いつの間にやらさっきとは逆の体勢。
「いただきます」
ご馳走様だろう、とはしかし突っ込む余裕はなかった。
唇が、重なって、
口付けはやっぱり、甘かった。
クロネ様へ
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